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2025/03/10 06:49 |
立金花の咲く場所(トコロ) 55 /ヴァネッサ(周防松)
PC:アベル ヴァネッサ 
NPC:ラズロ リリア リック 畑の妖精(?) コボルド三体 主犯格の男
場所:エドランス国 香草の畑

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


右目のまぶたの辺りが、時折ビクビクと震える。
ヴァネッサは、指先でまぶたを押さえた。
しばらく経ったところで、指を離してみる。
……治らない。

「どうしたの、ヴァネッサ」
リックとの絶妙なコンビネーションを見せるリリアが、コボルドへの攻撃の手をゆる
めないまま話しかけてくる。
「なんだか……ちょっと、まぶたが……」
「切れたの?」
「ううん。なんだか、震えるの。それが気になって……」
「うーん。魔法の使い過ぎ、とか?」
「わからないけど……」

ヴァネッサは、考え込む。
ギサガ村を出て、だいぶ経つ。
村にいた頃は頻発していた発作も、今ではほとんど起こらなくなっていた。
村の環境が悪いということではなく、アカデミーでの学習成果によって体質が改善さ
れてきているということである。
独学で使っていた魔法も、より効率的な使い方がわかってきて、体への負担が軽く
なっているのだ。
あとは、訓練。
魔法を重視した授業の取り方をしているヴァネッサだが、必須単位として最低限、護
身術程度の訓練を学んでいるのだ。
もっとも教官には「あなたは、武術にはあまり適正がないようですねぇ」と言われる
ような成績だが。

とにかく、以前のように魔法を使っただけで発作に苦しむこともなくなった。
だから、このまぶたの震えが「魔法を使ったため」とは断定できない。

(一体何なんだろう……?)


それが、男の指輪が淡い光を放った後から起きているのだということを、ヴァネッサ
は知らない。


リックはけん制のための攻撃をしながら、残りの体力を計算していた。
リリアとのコンビネーションがあるとはいえ、コボルドニ体を一気に相手にするのは
つらい。
持久戦に持ちこめない以上、そろそろ片をつけないと、危ない。
(あいつら、うまくやれるかな)
ちらり、とアベルとラズロのことが頭をよぎる。
援護に来て欲しいのはやまやまだが、二人は主犯格である男の相手をしているのだ。
アテにしないほうが、賢明だろうか。

ぐぎゃおっ、と威嚇のようなこえをあげて、コボルドニ体が襲いかかってくる。
その方向に向き直った瞬間――視界の片隅に、もう一体を捕らえた。

(同時に来たっ!?)

先に倒れていた一体が、起き上がってきたようだ。
彼らの間に作戦なんて高度なものはないだろう。
たまたま、襲いかかるタイミングが同時になってしまっただけだろう。

――不幸なことに。

「くっ!」

多少のダメージを覚悟して、目の前の一体を仕留めることに専念する。
渾身の力で突き出した剣はコボルドの足を貫き、動きを封じることに成功した。
――あとは……。

「リック!」

リリアが茂みから駆け出しかけた時。

「はいはーいっ」

突然、真っ白い布がコボルドに覆い被さる。
残ったコボルドニ体の体を縄のごとくぐるぐる巻き上げていくそれは……畑の妖精
だった。

「これぐらいしかできることないけど、まあ許してね」
「これぐらいって……充分だよ。助かった」

リックは荒い息をしつつ、額の汗を乱暴にぬぐった。
妖精は足に負傷したもう一体も、まとめて締め上げていく。
コボルド達はぐうむうとうなり声を上げ続けているが、妖精の締め上げる力は案外強
いらしく、どうにもならないようだ。

「大丈夫?」
「ちょっと……頑張りすぎたかな。くたびれた」
「やだなあ。まだまだ若いじゃないか」

まったくもって緊張感のない妖精の軽口に、リックは苦笑した。

「リック!」
「ケガはしてない?」

辺りへの警戒を怠らないリリアと、それに伴ってやってくるヴァネッサの姿があっ
た。


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2008/03/05 19:03 | Comments(0) | TrackBack() | ▲立金花の咲く場所

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