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2024/05/17 23:41 |
クロスフェード第6話 「狂獣」/ジェナス(鷹塔将文)
PC ジェナス ギュンター
NPC アルフォード ケヴィン ラーズ リーズ
場所 アルフォード家


__________________________________


 ラーズはこちらに向き直り、体勢を低くしている。今にも突進してきそうな感じ
だ。
「こいつぁまずいなぁ・・・」
 ジェナスはじりじりと後退しながら、何とかならないか考える。
 ラーズは、ジェナスに合わせるかのようにじりじりと迫ってくる。
 一触即発とはまさにこのことである。時計の秒針の音が聞こえてくるぐらいの静
けさに、全身から冷や汗が吹き出るのがよく分かる。
「――――!」
 目の前のラーズの姿が一瞬揺らいだ。と、次の瞬間にはそこから消えていた。
「何っ、・・・!!」
 とっさに前方に飛び込む。下がった頭のすぐ上を鋭い何かが通り過ぎてゆくのを
感じた。
 ジェナスはそのまま前転の勢いで立ち上がり、すかさず間合いを広げる。その間
に腰から短剣を引き抜き、構えることも忘れない。
 ラーズは両手から伸びる長い爪を構え、すでに体勢を立て直している。
「あの速さは反則だぜ・・・! まずは速さを何とかするか」
 ジェナスは短剣を構えたまま、右手に意識を集中させる。右手周りに霊気が集ま
り始め、視認できるほどに凝縮される。
「オォォォォォォ」
 その霊気に危険を感じ取ったのか、ラーズは声を上げて突進してくる。右腕を振
りかぶり、爪をさらに伸ばして振り下ろす。
 ジェナスはそれを短剣で受け流し、ラーズの右腕を軸に空中高くに身を投げ出す。
凝縮した霊気で光輝く右手を天にかざし、召喚の鍵を口にする。
「出でよ、冷気の精霊シヴァ!」
 凝縮した霊気が球体になり、弾け飛んだ。そこには、雪のように白い肌に薄い布
を巻いただけの女性精霊が現れる。
〈かなりの強敵のようね、ジェナス〉
「ああ、しかも傷つけてはならないときている。やっかいなことこの上ない」
 着地したジェナスの横にシヴァが並ぶ。軽口を叩き合いながらも、目線はラーズ
から離す事はない。
 そのラーズは、いきなり現れたシヴァに戸惑っているのか、構えたまま動こうとは
しない。
「異様にスピードが速くてな・・・頼むわ」
〈なるほどね・・・私を呼んだ理由がそれってわけね〉
 淡々と話しているようだが、どこか面白くなさそうだ。
「・・・お前を一番に信用しているからな」
〈・・・分かりきった世辞なんか、いらないわよ〉
顔を背けながら言う。うっすらと赤みがさした横顔に、苦笑しつつジェナスは心の中
でシヴァに感謝する。
〈では私の冷気で奴の足を止めてやろう! 凍り尽くせ、スターダストストーム!〉
 霧状に広がった冷気が、ラーズを包み込むようにほとばしり、足に収束していく。
ラーズは不意をつかれた形になり、避けることかなわず立ち尽くしている。
 冷気は完璧にラーズの足を凍らせ、動きを封じることに成功した。
「よし、あとはケヴィンさんに元に戻す方法を聞いて・・・」

ガシャァン!

 綺麗な破砕音が、ケヴィンの元に走ろうとするジェナスの耳に入る。
 ゆっくりと振り返ると、砕け散った氷の絨毯に佇むラーズがいた。ラーズは勝ち
誇ったように、足元に散らばった氷を踏み潰す。
「おいおい・・・、手を抜いたのかよ、シヴァ?」
〈そんな・・・バカな!?〉
 シヴァ本人も、信じられないと言った感じの表情である。
 衝撃を受けているその隙に、ラーズの姿が再び掻き消えた。
「! ぐぁっ!!」
 反応が遅れたジェナスは、背中に大きな一撃をもらってしまった。致命傷にはな
らないものの、出血は決して少なくはない。
〈ジェナ!〉
 シヴァがジェナスを抱えて間合いを広げる。
「くっ・・・、面倒なことになってきやがった・・・」
「迷いがあるからそういうことになるんだよ」
 背後から、聞きなれない声がする。
 ジェナスは背中の痛みを感じつつも、背後を見やる。
 開け放たれたドアがあり、そこに佇む一つの黒い影が見える。
「これは殺し合いだ・・・。もう一匹いるんだ、遠慮することはねぇだろ」
 室内に一歩足を踏み入れ、剣を構えるその人物は・・・
「お前が出来ないなら俺がやるだけだ。この、ユヴェス・ザ・オーバーキルが、な」
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2007/02/17 00:26 | Comments(0) | TrackBack() | ▲クロスフェードB

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